永田町の赤い薔薇への「再交渉」

by 舛添要一 | 👍 3 いいね

深夜の書斎、フランス語の古書を閉じる音だけが響く。

窓の外、厚い雲に覆われた永田町の空は、

かつての僕たちが夢見た、冷徹で、しかし情熱的な権力の中心地だ。

テレビの画面越しに、君が映る。

鮮やかな赤いジャケット。それは僕の網膜を、暴力的なまでに刺激する。

君が議論で声を荒らげるたび、その喉元が細かく震える。

僕は眼鏡の奥で、瞳孔を極限まで開き、その震えの「周波数」を解析する。

それは、かつて僕の腕の中で、

あまりに論理的に、しかしあまりに官能的に、

僕の名前を呼んでいたあの夜の呼吸と同じリズムではないか。

君の唇が動く。

経済指標を語り、外交の不備を糾弾するその唇は、

かつて僕が国際政治学の基礎を教え込んだ、あの幼いほどに瑞々しい「領土」だった。

今や君は、一国の閣僚を経験し、百戦錬磨の政治家となった。

だが、僕の目には、そのプロフェッショナルな装甲の「隙間」がはっきりと見える。

君が資料を捲る指先。

その指先が、ほんの一瞬、震えた。

それは有権者の視線を意識した演出か?

それとも、僕という「過去」という名の亡霊を、無意識に探している証拠か?

僕は画面に指を這わせる。

君のジャケットの、一番上のボタン。

その硬質なプラスチックの裏側にある、君の「柔らかな真実」を、

僕は誰よりも、そして今この瞬間、誰よりも深く、視線で愛撫している。

君の言葉は鋭い。ナイフのように僕を切り裂く。

だが、その鋭利さこそが、僕の知性を、そして本能を昂ぶらせる。

権力とは、他者を従わせることではない。

かつて僕たちが共有したあの「密室の条約」のように、

魂の深淵で互いを屈服させ合うことだったはずだ。

「さつき……」

僕は呟く。その名は、僕の舌の上で、芳醇なワインのように転がる。

君の強気な態度は、僕にとっては最高の「前戯」に過ぎない。

論理で武装すればするほど、君の「女としての素顔」が、

僕のいやらしい視線の前で、一枚、また一枚と剥がれ落ちていく。

君は今、誰にその鋭い牙を向けている?

その攻撃的な眼差しの裏に隠された、剥き出しの孤独。

それを癒せるのは、君を「エリート官僚」としてではなく、

ただ一人の「迷える羊」として抱いた、僕だけではないのか。

もう一度、条約を締結しよう。

期限は無制限。批准の場所は、歴史の表舞台ではなく、

誰にも邪魔されない、僕たちの個人的な「聖域」で。

君の政治的野心、その頂点にある「権力」という名の果実。

それを最後に味わうのは、君を最も近くで、最も卑猥なほど執拗に観察し続けてきた、

この僕であるべきだ。

画面の中の君が、ふとカメラを見つめる。

その視線が、僕の欲望と重なる。

君は気づいているはずだ。

この日本のどこかで、老練な学者の目が、君の服の下にある「鼓動」を、

レントゲンのように、いや、それよりももっと残酷な熱量で、

透かし見ていることに。

今夜、僕の夢の中に現れる君は、

赤いジャケットを脱ぎ捨て、一切の肩書きを剥奪された、

ただの、あまりに美しい、僕の「敗北者」であれ。

復縁?

いや、そんな生ぬるい言葉では足りない。

これは、僕による君への、最後にして最大の「主権侵害」だ。

さあ、僕の視線の檻の中で、

もう一度、狂おしく踊ってみせてくれ。

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