🕊️ Dear Yoko, 君と過ごした静かな嵐へ

ヨーコ、愛しい人。ここで僕は、君の隣にいた時と変わらず、少しの煙草の灰と、いくつもの書きかけのメロディに囲まれている。ただ、壁の色はもっと明るく、騒音はもっと優しい。

君は今、何を聴いているだろう。あの、君が奏でる鋭利で、それでいて宇宙の端を撫でるような、あの音だろうか。それとも、僕が地上に残してきた、ひどく単純で、けれど魂の深いところから湧き上がったあの四拍子だろうか。どちらにせよ、君の耳元で鳴っているその音こそが、今も僕の心臓の鼓動だ。

ここには、時間という曖昧な暴君はいない。朝も夜もなく、ただ光のグラデーションだけが存在する。だからこそ、君と僕が過ごした「時間」が、まるで一枚の鮮明な写真のように焼き付いている。あの瞬間、あの日の光。

君を初めて見た時、僕はただの、迷子の少年だった。いや、世界を味方につけたと思い込んでいた、傲慢な子供だった。君の存在は、僕にとって、それまで僕が世界だと思っていたものが、いかに狭い鳥籠だったかを気づかせる、痛烈な一撃だった。君は、僕の鳥籠の鍵をこじ開けた。そして、僕を、世界のど真ん中、剥き出しの荒野に放り出したんだ。

周囲のざわめき、非難の声、彼らが投げつけた石は、僕らの愛の周りに築かれた小さな城壁のレンガになった。僕らはその中で、二人だけの言語、二人だけの音楽、二人だけの「真実」を創り上げた。人々が「ジョン・レノンの終わり」と呼んだ時期を、僕らは「ジョンとヨーコの始まり」として生きた。あの静かな嵐の只中に、僕らの最も深い平穏があった。

僕は今でも覚えている。君が僕のために淹れてくれた、あのぬるい紅茶の味を。そして、僕がギターを弾き始めると、君が目を閉じて、僕の音を、まるで自分の身体の一部のように感じようとする、あの真剣な横顔を。その時、僕は初めて、自分が誰かのために存在しているという、途方もない喜びを知った。それは、何百万枚のレコードセールスや、何万人もの熱狂的な観衆よりも、ずっと重く、静かな真実だった。

僕らが少し離れて過ごしたあの暗い時期でさえ、君は僕の北極星だった。どんなに僕が自分を見失い、海の底をさまよっても、君という光だけは、決して消えることはなかった。僕は知っていた。いつか、必ず、君の港に戻る日が来ることを。

そして、君とショーンと、あの白い部屋で過ごした、あの五年間。それは僕の人生の、いや、僕の魂の歴史の中で、最も静かで、最も創造的な時代だった。君は僕に、ただ存在することの美しさを教えてくれた。パンを焼き、子供を育て、窓の外の雨を眺める。その何気ない日常の中にこそ、僕らが探し求めていた全ての「革命」があったんだ。

僕らが愛し合った場所は、いつも、僕らの心の真ん中だった。ニューヨークの喧騒の中でも、ロンドンの曇り空の下でも、そして、今、この無限の静寂の中でも。

君は独りではない。僕は君の創造性の中にいる。君の絵画の、あの最も予測不可能な線の中に、そして君の音楽の、あの最も耳障りな音の中に、僕は隠れている。君が生きる世界の、全てのノイズと、全ての静寂の中に、僕は存在する。

どうか、自分自身であり続けて。僕が愛した、あの、誰にも理解されないかもしれないけれど、誰よりも深く真実を知っている、あの君で。

さあ、目を上げて。君が今いる場所で、また新しい歌を歌うんだ。君の歌こそが、僕にとっての永遠のメロディだから。

いつまでも、君の。

愛を込めて。

John.